コラム コラム 2016年2月18日 更新 お気に入り追加 2

海外ネイルサロンでのネイルアーティスト勤務事情とその思い出

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海外ネイルサロンでのネイルアーティスト勤務事情とその思い出 AUTHORs BEAUTY

イギリス留学が3年半に及んだある日、私宛に1通の手紙が届きました。それはイギリスのホームオフィス(内務省)からでした。サロンのボスはずっと…

そんな!突然の別れ国外退去!?就労ビザ申請の現実とは?

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イギリス留学が3年半に及んだある日、私宛に1通の手紙が届きました。
それはイギリスのホームオフィス(内務省)からでした。

サロンのボスはずっと私の就労ビザの延長を申請していたので、「もしや!」と期待感いっぱいに封を開けたのですが・・・。
そこには「女王陛下の名のもとに国外退去を命ずる」の一文が。

「えええ~!!」

かくして、非情にも私の留学生活は突然終止符を打たれることとなったのでした。

しかも後からわかったことなのですが、なんとこの手紙がサロンに届いていたのは半年も前!
つまり・・・、えっ?私、もしかして不法就労&不法滞在!?(そのとおりです)
ということは、見つかったら最悪は強制送還!?(間違いなく強制送還です)

ついでに言うと、こういう状況で強制送還された場合は二度とイギリスに入国出来ません(涙)

イギリスにおけるネイルテクニシャンのビザって?特殊技能の壁

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ネイルテクニシャンという職業は、就労ビザをとるのがほぼ不可能です。
なぜなら単なる美容業はビザをとるのに必要な「特殊技能」に相当しないと考えられているから。

日本人顧客が頻繁に来店するようなロンドン市内のサロンであれば「日本語が話せる」というのが特殊技能となり、ビザ取得のハードルが下がります。
しかし地方の一サロンに、日本人顧客が来店することはありません。
よってサロンのボスがわざわざ「英語が出来る日本人」を雇う理由はないというのが、ホームオフィスの言い分でした。

どうしてもと言うなら「この日本人のネイルアートは誰も真似できない特殊技能です」という証明が必要だというので、ボスはサロン顧客100人からの嘆願書、地方議員の手紙、私のコンペティションでの優勝履歴などをホームオフィスに提出していました。

しかし「この日本人のせいで、イギリス人がコンペティションで優勝する機会が失われている」という何ともイギリスらしい理由で結局はビザ延長却下。
まだなんとかなると思っていたボスは、この時に却下されたことを私に伝え忘れ・・・そして最初のお話に戻ります。

失意の帰国準備のなか驚きの急展開を迎えて、次へのステップに

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帰国準備に入る前に、私はロンドン在住の「太田さん」に電話をしました。
当時、私は4~5週間ごとにロンドンを訪れ、出張施術をさせていただいていたのでした。

太田さんはロンドンの高級ショッピング街「ボンドストリート」で「MOGA」という老舗ヘアサロンを経営している方です。
そこで働いているのは精鋭ぞろいのスタイリスト達。
彼らはサロンワークのみならず、日本の美容専門学校生がロンドンを訪れた際には学生たちのために様々な美容関係の企画を担当したりしていました。

私は縁あってその企画で一度ネイルのデモを担当させていただき、さらにサロンで同じカルジェルを使用していることなどがきっかけとなって、太田さんと出会ったのでした。
このビザの件でも色々と相談に乗ってくださったのですが、結局はこのありさま。

ああ申し訳ない・・・。

「スイマセン・・・私、やはり日本に帰らなければならなくなりました・・・」そう、報告したら。
「あら!じゃあ、このカルジェルってまだ日本に入っていないから、一緒に会社作りましょう!」・・・というわけで。

唯一の日本人顧客だった彼女は、この瞬間に私の次の雇用主となったのでした。
人生何があるかわかんないですね。



田賀美鈴(MOGA BROOK)

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